結局私はどうなるの⁉︎ 発達障害の診断基準が改訂

結局私はどうなるの⁉︎ 発達障害の診断基準が改訂

●2013年、診断基準の改訂

2013年5月、発達障害の診断に深く関わっているDSMという診断基準が改訂されました。19年ぶりの改訂です。DSMは、アメリカの精神医学会の診断基準です。患者の精神医学的な問題を診断する指針を示すためにアメリカ精神医学会が定めたものです。

ただし、DSMが使われているのはアメリカの精神医学会だけではありません。現在では世界中で使われています。もちろん、日本でもDSMが発達障害の診断の際に使われています。

2013年の改訂では、自閉症やアスペルガー症候群などを包括的に「自閉症スペクトラム障害」と定義しました。自閉症スペクトラムは、自閉症の傾向が強い人から社会的な困難がほとんど無い人までの連続体として障害をとらえようとする命名です。

自閉症スペクトラム障害という言葉が使われることで、アスペルガー症候群という診断名は使われなくなりました。アスペルガー症候群は、独立した診断分類としては削除されることになったのです。

●改訂を受けて不安の声も

2013年の改訂に対しては、患者たちから不安の声が上がっています。アメリカのエール大学の研究グループの調査によると、従来アスペルガー症候群と診断されていた人のデータを新しい基準で診断しなおしたところ、4分の3の人が自閉症スペクトラム障害には該当しなくなったとのことです。

診断名が外れたことで、今後は同じような障害を抱えていても、コミュニケーション技術の支援教育などが受けられなくなるのではないかと、改訂後に不安を抱く声も上がっています。

●改訂によって何が良くなるのか?

診断基準の改訂には、不安の声も上がっています。しかし、新しい基準を歓迎する声もあります。

改訂によって発達障害の症状の併存が認められるようになったからです。最も大きなメリットは、アスペルガー症候群とADHDの症状をともに持つ人が症状を正しく診断してもらえるようになったことです。

改定前の診断基準では、アスペルガー症候群とADHDの併存という診断はできませんでした。必ずどちらかの診断名をつける必要がありました。そのため、ある病院ではアスペルガー症候群と診断され、別の病院ではADHDと診断されるということもありました。

しかし、改訂された診断基準ではアスペルガー症候群とADHDの両方の症状を持つという実情に合わせた診断ができるようになりました。実際にはアスペルガー症候群とADHDの両方の症状を持つ人はけっして少なくないと言われています。

実情に合わせた診断ができるようになったことで、今後は病院による診断のばらつきが減るものと思われます。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

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