大人のアスペルガー症候群 職場で円滑に接するための3つのポイント

大人のアスペルガー症候群 職場で円滑に接するための3つのポイント

●実際に診断を受けている人はまだまだ少ない

アスペルガー症候群。最近認知度が上がってきました。アスペルガー症候群関連の本も少なからず出版され、おおよその行動特徴については、かなり多くの人が知るようになってきました。

アスペルガー症候群を含む発達障害の人は、症状が軽い人も含めると10人に1人の割合とも言われています。ただし、現在成人となっている人が子どもの頃には、まだ健診でチェックされていたわけではありません。また、発達障害が広く知られるようになった今日でも、成人の発達障害を診断できる医療機関は非常に少ないのが現状です。

ことにアスペルガー症候群は、知的な遅れを伴うわけではなく、学校の成績は標準以上に良いことも少なくないため、本人は自分がアスペルガー症候群だと知らないことも多いようです。

就職して対人関係がうまく築けず、職場で浮いてしまったり取引先と大きなトラブルを起こして二次障害を引き起こし、精神科を受診しても、背景にアスペルガー症候群があると気づかれるまでに何年も掛かったというケースが少なくありません。

本人が分からない、精神科を受診していても医師が気づかないということは少なくないのです。アスペルガー症候群の人の行動特徴が当てはまりそうだからといって、安易に「アスペルガーだ!」と決めつけるのは控えたいものです。

●アスペルガー症候群かな?と思う同僚と上手に接する3つのポイント

1.作業の分担は具体的に決めて見えるところに書き出しておく。

アスペルガー症候群の人は、場の空気を読むのが苦手です。自分の作業を終えても、他の人が多くの仕事を抱えていたらさりげなく手伝うというような暗黙の了解は、アスペルガー症候群の人には理解できません。「自分の作業が終わったら、○○さんの仕事を●時まで手伝うこと」というように書いて貼ってあれば、きちんと仕事をこなしてくれます。

2.一つのことに集中できる仕事を回すのが良い。

アスペルガー症候群の人は臨機応変の対応が困難です。何でもその場の状況に応じてこなすというような仕事には不向きです。同じ職場の中でも一つのことに集中できるような業務についた方が障害の特性を活かして能力を発揮できますし、周囲も振り回されずに済みます。

3.曖昧な表現は避ける。

アスペルガー症候群の人は曖昧な表現だと理解できません。「ここ」「適当に」「うまく」というような表現では、指示が伝わりません。どこをどこまで、どのようにして欲しいのかを具体的に伝えましょう。言われたことはきちんとしてくれます。また、自分の能力を生かせる業務は、普通の人が及びもつかないほどの集中力でこなしてくれます。

●コミュニケーションを通してお互いの理解を

アスペルガー症候群と診断されている成人は少ないのが実情です。診断できる医師が少なくないということもあります。また、アスペルガー症候群の場合には、学校の成績は標準以上に良いことも少なくないため、自分が障害を抱えているという意識を持ちにくいと言えます。

しかし、幼い頃から、なんとなく自分が周りと違っているという意識は持っています。周りから疎まれているという感じは持っています。アスペルガー症候群の人は、周りの人の反応に実は敏感です。ただし、どうして自分が疎まれるのかは理解できません。普通に接しているつもりなのに相手が自分の予想もしない反応をすることに戸惑っています。

アスペルガー症候群の人は、周りに無関心で自分がどう思われているのかに無頓著だというのは誤解です。また、厳しいことを言われてもすぐに忘れるというのも誤解です。アスペルガー症候群の人は、自分に対して言われたことをよく覚えています。理不尽な対応だと感じるだけに、何年も前のことを詳細に記憶していることが多いものです。

そうしたことが積み重なって、アスペルガー症候群の人は、時に攻撃的になったり言い訳が多くなったりします。また、診断も確定していないのに「アスペでしょ」と言われることに強い嫌悪感を持っています。「アスペルガー症候群」ではなく「アスペ」と言われる時には侮蔑の意味合いがこもるからです。

定型発達の人にアスペルガー症候群の人の感じ方が理解しがたいのと同様に、アスペルガー症候群の人にとっても定型発達の人の感じ方を理解するのは困難です。しかし、言葉という架け橋が無いわけではありません。理解を目指してコミュニケーションをとる努力が双方に求められるでしょう。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

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