発達障害の遺伝子研究の目的
発達障害が発症する原因に遺伝があると考えられています。
ただし、発達障害の遺伝子に関する研究の歴史は長くありません。
発達障害の遺伝子研究が最も進んでいるのはイギリスですが、イギリスで発達障害の遺伝子研究が始まったのは2010年のことです。
研究には、イギリス全土とアイルランド共和国を合わせた24の地域遺伝医療センターの医師180人が加わっています。
発達障害の遺伝子研究の目的は、発達障害の診断率の向上を目的としています。
発達障害を疑って病院を受診しても診断が下されないケースが少なくないためです。
深刻な発達障害の症状を持つ子どもの半数近くが、未だに確定した診断を得ていないのが現状です。
診断が確定しなければ、効果的な療育も行えません。
発達障害のそれぞれの症状に関与する遺伝子変異を特定することで、診断率を現在よりも10%は向上できるとされています。
発達障害の診断率の向上を目的として、遺伝子研究は進められています。
最新の遺伝子研究
国際的な総合科学誌『ネイチャー』のオンライン版に2014年12月24日、発達障害に関連する遺伝子12個を発見したという論文が掲載されました。
論文を発表したのは、イギリスの遺伝子研究機関ウエルカム・トラスト・サンガー研究所などの研究チームです。
研究チームは、診断が確定していない重度の発達障害の子ども1133人の遺伝子を詳しく調べました。
子どもたちの1人1人について2万個以上の遺伝子を分析したそうです。
また、その子どもたちの両親のすべての遺伝子情報も調べました。
その結果、発達障害に関連する遺伝子が12個見つかりました。
新たに発見された12個の遺伝子のうち6個については、何らかの強い影響によって正常な発達を乱すような仕組みがあるのではないかと、研究チームはみています。
今後の発達障害の遺伝子研究
遺伝子が変異することで発達障害が起こることがだんだんと分かってきています。
変異とは、他の大多数の遺伝子の形質と異なる形質をある遺伝子の集まりが持つようになることです。
遺伝子に組み込まれた情報に誤りが生じることが発達障害を引き起こすと考えられています。
遺伝子に組み込まれた情報に誤りが生じる原因は分かっていません。
遺伝子変異の中には、両親からの遺伝で受け継がれるものもありますが、子どもに初めて出現するものもあります。
特定のタイプの突然変異が起こる確率は5000万分の1と言われています。
遺伝子研究はまだ始まったばかりです。
研究チームは12000家族分の遺伝情報を解析することを目標としています。
また、自分たちの研究成果を世界中に公表して多くの人たちと情報を共有することに努めています。
【関連記事】
成人のアスペルガー症候群
大人の発達障害の5つの特徴と問題
発達障害の基礎知識 広汎性発達障害
発達障害の基礎知識 学習障害(LD)
発達障害の基礎知識 ADHD