理念の実現がのぞまれている発達障害者支援法

理念の実現がのぞまれている発達障害者支援法

●発達障害者支援法が施行された意義

2004年に発達障害者支援法が施行されました。発達障害者支援法は、発達障害者の早期発見および発達障害者の就労支援を目的とした法律です。

それまでに施行されてきた障害者支援の法律と大きく異なる点は、支援の対象を知的障害や身体障害を伴わない発達障害者に広げたということです。

発達障害者支援法が対象とするのは、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害、高機能自閉症、アスペルガー症候群などです。

これらの発達障害は従来の障害の概念外でした。

発達障害者支援法が施行されるまで、注意欠陥多動性障害、学習障害、高機能自閉症、アスペルガー症候群などの発達障害を持つ人は、家庭や地域、学校や職場等でさまざまな困難を抱えつつも、生育環境やしつけの問題、本人の努力不足と誤解されることが多くありました。

発達障害者支援法は、発達障害が生まれつきの障害であるとの認識のもと、それまでの法律では障害者とみなされてこなかった子どもや大人に支援を広げようとするところに大きな意義があります。

●発達障害者支援法の実施の中心となる発達障害者支援センター

発達障害者支援法が施行された2004年、障害者基本法も改定されました。改定された障害者基本法も発達障害者支援法も、支援のための施策を都道府県や市町村が制定することように義務付けています。

発達障害者支援法の施策は、医療、保健、福祉、教育、労働のすべての分野において施行する必要があるとされています

発達障害の早期発見体制、学校や職場における発達障害者の支援体制を整えるために作られたのが「発達障害者支援センター」です。

発達障害者支援センターでは、発達障害の早期発見、早期支援、発達障害者の就労支援を行うものとされています。また、発達障害に関する研修を随時行い、発達障害者に関わる諸々の領域との調整を行うことが定められています。

●発達障害者支援法の施行後の成果と課題

発達障害者支援法の施行を受けて、関連領域ではさまざまな試みが行われています。ことに医療、保健分野では、早期発見、診断、治療における措置を講じることがうたわれています。

都道府県や市町村は、医療、保健サービスを提供する病院や診療所を確保することが義務付けられています。

3歳児検診や5歳児検診において高機能自閉症や注意欠陥多動性障害を早期診断する試みも始まりつつあります。

教育分野でも、発達障害者支援法の施行を受けて、特別支援教育体制推進事業が2005年から始まりました。幼稚園や小学校、中学校に在籍する発達障害児への支援が始まっています。

発達障害者支援法の施行を受けて少しずつ支援体制は作られています。しかし、多くの自治体では、発達障害者支援法が表明している理念を実行するために必要な予算や専門的な人員を確保するのに苦労しています

発達障害者支援法には、履行に関する罰則等はありません。

都道府県や市町村が施策を力強く進められるような社会的な機運の盛り上がりが求められていると言えます。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

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