うつ病の治療薬は太るの!?知らなかったこんな副作用

うつ病の治療薬は太るの!?知らなかったこんな副作用

●うつ病の治療薬で太ることはある⁉︎

うつ病の治療中に体重が増加したという話を聞くことはないでしょうか?

抗うつ薬には、確かに「体重増加(食欲増進)」が副作用として添付文書に記載されているものがあります。うつ病の治療が順調に進んで体調が回復し、落ちていた食欲が戻ってきたというばかりでなく、薬の作用として食欲を増進させるものがあります。

抗うつ薬の中でも、抗ヒスタミン作用のある薬、セロトニン受容体遮断作用のある薬の2種類については、食欲が亢進して体重が増加することが多いとされています

●どうして太るのか?どんな薬が太りやすいのか?

抗ヒスタミン作用のある薬とセロトニン受容体遮断作用のある薬とでは、太るシステムが異なります。ヒスタミンは食べるという行動を抑制する働きをします。抗ヒスタミン作用とは、食べる行動を抑制する働きを抑える作用です。つまり、食欲を増進するのが抗ヒスタミン作用です

セロトニン受容体を遮断すると、満腹中枢を刺激しなくなるため、食欲が亢進してグレリンの分泌を促進します。グレリンは、ペプチドホルモンの1つです。インスリンや中性脂肪、コレステロール値などを変動させずに食事を摂る量を増やすとともに体脂肪の利用を抑制する作用を持つホルモンです。グレリンが増えると、食事量が増える一方で体脂肪は燃焼されにくくなりますので、体重が増加しやすくなります

抗うつ薬の中では、「リフレックス」「パキシル」「トリプタノール」が体重増加を引き起こしやすい薬と言われています。いずれも抗ヒスタミン作用の強い薬です。また、三環系の抗うつ薬「トフラニール」「アナフラニール」も抗ヒスタミン作用が強いとされています。

●もしも太ってしまっても

うつ病の症状が深刻でまったく動けない状態にもかかわらず、食欲はさほど衰えていないということも無いわけではありません。そのような場合には薬のせいで太ったとは必ずしも言えません。生活習慣が原因でうつ病の治療中に太ることはあります。

食欲が落ちたままなのに太った場合、抗うつ薬の影響も考えられます。太ることが大きなストレスになる若い女性などにとっては、薬の副作用で太ることはないがしろにできない問題でしょう。どうしても気になってそのために食事制限をするようなら、担当医に相談しましょう。病状を改善するのに効き目があって太る副作用が弱いものに替えてもらうと良いでしょう。

独断で薬を止めることは控えましょう。同じ薬を飲んでも全員が太るわけではないので、薬の副作用として体重が増加したということを医師に伝えることも大切です。食生活や運動量を具体的に説明し、体重増加が精神的に負担になっていることを説明しましょう。

うつ病に罹っている時には、自分の状態を客観的に把握することが難しくなっていますので、事前に家族に確認すると良いでしょう。その結果、体重増加が気になるということなら、自分の生活ぶりや負担に感じることを担当医に伝えて相談しましょう。自分を客観的に把握して自分の状態を冷静に説明すること自体が大切なステップになります。自己判断で抗うつ薬をやめてしまうことは避けましょう。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

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