うつ病の治療においては薬物治療が最も重要となります。それまで健康で普段薬を服用するような習慣がなかった人にとっては戸惑うかもしれません。
多くの患者さんが、できることなら薬に頼らずに治したいと考えるでしょう。実際他の病気と同じように単に休養するだけでも症状が改善される場合ももちろんあります。
しかしそれでもうつ病には薬物治療が欠かせない理由とはどのようなものなのか、また薬物治療で注意したい点はどのようなことがあげられるでしょうか。
1.うつ病における薬物治療の大切さ
うつ病になると、症状は個人差がありますが、とても辛く胸が締め付けられるような苦しさに見舞われるものです。焦燥感が激しくて不安感が強くそわそわしてじっとしていられなくなり、椅子に座っていたり布団のなかで横になっているのも苦しくなります。
睡眠障害を伴うことが多く、夜も満足に眠れない状態が続きます。そのため身体を休めるといってもなかなか難しいものがあります。休養がうまく取れないだけではなく食欲も大きく減退することが多いため、栄養不足となって身体にとって一層良くないのです。
そのためこうした不安や焦燥感、睡眠障害、食欲不振などの症状を緩和して十分な休養や栄養を取りながら総合的にうつ病を治療するためにも薬物治療は重要です。
うつ病は従来は心の病ともいわれていましたが、現在では脳の神経伝達系における病気であることがわかっているのですから、これを薬によって治療するとするのは自然な発想です。
2.薬物治療で注意したいポイント
うつ病における薬物治療では、抗うつ薬に即効性は期待できません。これは抗うつ薬の有効成分が効果を発揮するために一定の血中濃度となることが必要とされていて、それには薬にもよりますが2週間程度はかかるからです。
効果が現れるまでの間は辛抱して飲み続ける必要があり、効かないからといって勝手に飲むのを止めてはなりません。
また逆に効果が現れて体調が非常に良くなったという場合、うつ病が治ったと思ってやはり勝手に薬を飲むのを止める人がいますが、これもうつ病が再発する危険があります。薬の服用に関しては、必ず医師と相談して進めることが大切です。
近年の抗うつ薬の進歩には目覚ましいものがありますが、薬である以上効果が大きい一方でやはり副作用もあるものです。副作用が現れた場合にも、やはり速やかに医師に相談すべきです。うつ病の薬物治療は長期に渡ることが多いですから、うつの症状に効果があったとしても身体に合わない薬の使用は避けるべきです。