「もうやだ」「しんどい」「むかつく」……SNSで愚痴る心理とは?

「もうやだ」「しんどい」「むかつく」……SNSで愚痴る心理とは?

ここ数年、インターネットの急速な普及により子供からご老人まで、パソコンや携帯を所有する層は確実に広がっています。検索サイトを利用しての情報収集や動画視聴、ネットショッピングなど利用するサービスはさまざまですが、特に人気なのは「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」、いわゆる「SNS」。

mixi、twitter、facebookなど、登録すれば同じようにアカウントを持った人と繋がり、日記やつぶやきを書き込めば反応があったり、また誰かの言葉にリアクションを返したりと多くの人とコミュニケーションを楽しむことができます。登録制と言えどメールアドレスひとつあれば登録ができる場合も多く、個人的な情報や書き込みはほとんど誰でも閲覧できる状態とさえ言えます。

そんなSNSで「もうやだ」「助けて」「あの人、ほんとムカつく……」などと愚痴や弱音を吐いている人を、見たことがありませんか?

新しいコミュニケーションの場として利便性と楽しさをあわせ持つSNSで、かえって心が疲れてしまう「SNS上の愚痴」について考えてみましょう。

◆なぜ愚痴を書き込むのか

SNSに愚痴を書き込むと、多くの人が目にしてしまいます。「個人的な感情が他の人に見られてしまうのは恥ずかしい」と感じる人も多いかもしれませんが、SNSに愚痴を書き込む人は、その愚痴を誰かに「見てほしい」と考えているのかもしれません。

SNSは実名で登録している人や現住地、出身校などを公開している人も少なくないため、書き込みを身近な人に見られてしまう可能性があります。だからこそ「自分の今の状態を知ってほしい」「直接言えない感情に気づいてほしい」場合に、「ただ独り言を呟いているだけです」というスタンスのSNSは便利な存在なのでしょう。

◆愚痴を公開する「利点」?

ノートに愚痴を書くというやり方や、誰かに直接不平不満をこぼすこと、匿名掲示板やSNSに書き込むことのの最も大きな違いは「あの人、ほんとムカつく」と書き込むことで目にした人が「自分もそう思う」という共感性を生み出しやすいということです。

書き手は、問題の中心となっている「あの人」が自分の書き込みを目にすることはいだろう、そう思いながらも、自分が不平不満を感じたことに対して、誰か共感してほしい、そういう無意識の思いがあるのかもしれません。

◆本人へ届かなくても……「利点その2」?

しかしそうした愚痴が増幅していくことは、本人にとっても、受け手側にも決して良い影響を及ぼすことはありません。一時的には、『私もそうもう』『私もつらい思いをしました』など、疑似的な結束感を感じることがありますが、それはあくまでもインターネットでの薄いつながりです。出来事や状態の背景や本当のやり取りなどを把握せず、一方からの意見から真実を見極めることはできません。

しかし、愚痴を書き込むことで、全く見ず知らずの人から共感をされたり、見ず知らずの人ではなく、現実の知り合いであっても、その問題とは直接関係のない友人から「どうしたの? 大丈夫?」と声をかけられれば、問題やいら立ちを共有しているという意識が芽生え、感情が落ち着くこともあるようです。

インターネットの普及、SNS利用者の急増により新しいコミュニケーションが広がっています。その一方、独りでいる時間にも他人と時間や情報を共有し「繋がっている」という実感が、気疲れをもたらすことも。

他人のプライベートな感情が溢れかえっているSNSに疲れを感じたら、時には離れてみることも必要かもしれませんね。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

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