実は、精神疾患と精神障害の違いというのは明確な定義はありません。精神保健福祉法では精神疾患=精神障害と同じもの捉えられています。しかし、精神疾患と精神障害を分けて考えている方もいらっしゃいます。
ここでは、精神疾患と精神障害の違いについて、ざっくりと見ていくこととします。
●障害には完治できない可能性がある?
まずみなさんは、医療における「障害」という用語をみて、どのようなことを思い浮かべるでしょうか。
身体障害や視覚障害、聴覚障害そして精神障害などの言葉が出てくるかもしれません。医療の現場では「障害」のことを一般的に、治療をしたとしても完治はできず、日常生活に支障が出る可能性があるものと定義されています。
●疾患は完治が可能?
一方疾患というのは治療によって「完治」が可能であるものです。
「風邪」や「インフルエンザ」に代表される、いわゆる病気といえばイメージしやすいでしょうか。ですので広義で言えば、治るものを「疾患」治らないものを「障害」といいます。
えっ?じゃあ精神障害って完全には治らないの?という疑問がわいてくるかもしれません。これに対する返答は、完治するしないではなく、実は完治かどうか判断ができないんです。
●精神障害や精神疾患は完治したかどうか判断が難しい
精神障害・精神疾患は目に見えるものではないため、原因やどのような状態が完治した状態なのかなど判断や診断がとても難しい分野なのです。
私たちの体の病気はたくさんの研究によって、分類や診断基準が充実していますが、目に見えない私たちの脳や精神に関しては行動や本人の訴えでしか判断できない部分は多く、研究はまだまだ発展途上なのが実情なのです。
ですので、精神障害・精神疾患では「完治」ではなく「寛解」という言葉を使います。
「寛解」とは症状が落ち着いて安定した状態をさす言葉ですね。
●精神疾患と精神障害の違い
では、精神疾患と精神障害が使い分けられることがあるというのはなんなのでしょうか。これは、簡単に言うと、有効な医学的対処法があるかないかということです。
先ほども申し上げましたように、精神に関する研究はまだまだ発展途上で、どのような症状がでることはわかっているけど、それに対しての対処法は出来上がっていないなど、その精神の病気に対して有効な対処法があるものとないものがあります。
その中で、医学的対処法がみつかっている精神障害を、精神疾患と呼ぶようです。対処法には、医学的な対処法、心理学的な対処法、教育的な対処法などなどがあります。
このうち、医学的な対処法が見つかっている、薬物療法などで治療が可能なものが精神疾患と呼ばれるということなのです。
しかし、精神障害は医学的な対処法ができあがっていないから、対処は困難とは必ずしも言えません。
医学的、心理学的や教育的など様々な観点から精神の研究がなされていますし、心理学的アプローチや、あたらしい医療的アプローチで改善が見られることもあります。
まだまだ分からないことが多い精神の分野ですが、以上の研究のように様々な観点からみてみると、私たちの私生活でも新しい発見があるかもしれませんね。