痩せたいのに食べてしまう…「拒食症」と「過食症」の密接な関係

痩せたいのに食べてしまう…「拒食症」と「過食症」の密接な関係

●拒食症と過食症を繰り返しやすい

食べることを頑なに拒む拒食症。異常に食べてしまう過食症。食べる量だけに注目すると、拒食症と過食症は対極にあります。しかし、純粋な拒食症よりも、拒食と過食を繰り返して自己嫌悪に苛まれるケースが最近増えてきています。

出発点は拒食症であっても、その後、過食症に移行したケースは60~70%に上ると報告されています。過食からスタートすることもあります。拒食ではなく、過食から発症するタイプは、低年齢で発症する傾向があると報告されています。

過食症では、嘔吐を伴う場合と嘔吐を伴わない場合で違いがあります。嘔吐無しの過食症では、約9割がダイエットからスタートしていますが、嘔吐を伴うタイプでは、必ずしもダイエットからスタートするわけではなく、発症の仕方はさまざまです。

●拒食症の人も過食症の人も痩せたいと思っている

拒食症が進行すると、さまざまな体調不良が生じます。そのため、周囲が心配して食べさせようとします。拒食症の人には「いい子」が多く、周りを心配させまいとして、人前では食べてみせることもあります。しかし、食べた後で、すぐにトイレに行って吐くことも少なくありません。

周囲の人から言われたというのではなく、自分から食べ始めることもあります。しかし、その食べ方は尋常でないことが多くなります。味わうこともなく、大量の食べ物を短時間にとにかく詰め込みます。夜になると「食べたい!」という気持ちを抑えられない人も少なくありません。テープで封をしていても、はがして食べてしまう、調味料まで舐めるということもあります。

過食に走る人は、太りたい、標準体重に戻りたいと思って食べているわけではありません。過食症の人も、「痩せたい!」と願う人なのです。痩せたいのに食べてしまうため、過食した後では、激しい自己嫌悪に陥ります。そのイライラがさらなる過食を引き起こす悪循環から抜け出せません。

●不安から逃れるための過食

過食は多くの場合、拒食症と密接な関係があります。最も典型的なケースは、ダイエットから始まり拒食症になり、過食症に移行するものです。極端なダイエットは、慢性的な飢餓状態を作ります。心身ともに不安性な状態です。そのような状況で思い通りにいかないことがあったり、相手から拒絶されたりすると、一気に心の張りが失われます。

もうどうでもいいと自暴自棄になったり、寂しさが募ったり、落ち込んだりします。「自分の今までの努力は無駄だった!」と感じられた瞬間、拒食は過食に転じます。

見捨てられる恐怖心、自分への絶望、孤独感など、否定的な感情が抑えられなくなった時、炭水化物や甘いものに手が伸びるようです。食べている時には「頭が真っ白になっている」という人も少なくないと言います。何か口にしていないと、自分の中の否定的な感情を抑えることができず、そうした感情を意識しないようにするため、結果的に食べるという行為に走ります。

食べたくて食べるわけではなく、不安や恐怖から目を背けるために選ばれた行為が食べることなのです。赤ちゃんが安心できる母親の懐でおっぱいを夢中になって飲む様子に例える人もいます。束の間の安心。しかし、その安心は長続きしません。食べてしまった後では、激しい自己嫌悪に陥ります。

吐く、下剤を使うという行為で、食べたことを無かったことにしようとする人が従来は多かったようです。しかし、近年は嘔吐なしの過食症も増えています。「太る」という恐怖心に直接晒されますが、それでも食べることが止められません。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

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