●摂食障害は若い人だけの病気ではない
摂食障害は若い女性の病気というイメージがあるかもしれません。実際に現在治療に結びついている患者の約9割は、10~20代前半の女性です。しかし、男性にも潜在的な患者は少なくないと指摘されるようになりました。
また、近年の厚生労働省の調査では、中高年にも摂食障害に苦しむ人が少なくないことが報告されています。摂食障害に詳しい京都市の烏丸御池中井クリニックの中井義勝医師は、摂食障害の低年齢化とともに、近年では高年齢化も見られると指摘します。
妊娠や出産を機に30歳前後で摂食障害が始まるケースが少なくないようです。40~50代の人も少なくありません。中には60代の患者もいます。
●実は以前も摂食障害を患っていたということが多い
中高年で発症するケースでは、10~20代に摂食障害を経験したことがある人が多いとされています。症状が治まっていたのに、何らかのきっかけでストレスが強まり、摂食障害を再発させるケースが多いと言われています。
きっかけとなるものの多くは、家族関係の悩みです。結婚によって新しい家族が増え、義理の両親との付き合いも始まります。義理の両親との関係が上手くいかないことも引き金になります。
出産をきっかけに体重が増加してダイエットを始めたところ、過激なダイエットになってしまったという人もいます。出産後に太ったことを夫に指摘されたケースでは、過剰なダイエットから拒食症になり、拒食と過食を繰り返すようになることもあります。
産後うつから過食に走る人もいます。子育てで悩み、過食になる人もいます。ママ友に痩せている人が多いため、ダイエットをしだして拒食症になる人もいます。もう少し年齢が上がると、両親の介護がきっかけでストレスを溜め、摂食障害を発症することがあるようです。
●以前の光景が浮かんでパニックになることも
中高年で摂食障害を発症する人の多くは、若い頃に摂食障害を経験したことがあるとされています。そのため、摂食障害を発症した時、以前の状況が自分の中に蘇ると言います。過食していた光景、食べ物を求めて夜中にコンビニエンスストアに走ったことなど。その時の不安が現在の不安に重なるようです。
以前の不安が重なってパニックを起こすこともあります。過食する自分を以前どうやってコントロールして、症状を抑えられるようになったのかは、記憶の中から消えてしまっています。
摂食障害が再発したら、早期に病院を受診した方が、症状は早く緩和されます。病院を受診しましょう。家族が病気を理解し、受け止める姿勢を持つことも、症状を軽減するのに大きな力になります。
過食衝動は、通常長時間は続かないと言われています。衝動が激しいのは30分くらいとする専門家もいます。その間、気分を紛らわせることができるように、何かに没頭すると、軽い過食衝動なら、やり過ごすこともできるようです。
また、過食を我慢する期間を1~2日といった短期間設定するのも効果的です。過食を我慢する期間を設定する時には、「この期間が過ぎたら、好きなだけ食べていい」と考えることが大切だと言われています。