「いじめから守るために」アスペルガーの子どもに大切なサポートとは

「いじめから守るために」アスペルガーの子どもに大切なサポートとは

●実はいじめられていることが少なくない

アスペルガー症候群の子どもは、いじめの対象になることが少なくありません。休み時間や登下校の途中でいじめられていることが多いようです。しかし、いじめられていると保護者に訴えることはなかなかありません。学校に行きたくないというような表現の仕方で訴えます。また、体調不良といった身体症状として現れることもあります。

アスペルガー症候群の子どもは、集団の暗黙のルールが理解することが苦手です。そのため、仲間から疎まれることが多いようです。相手がどのように感じるのかが分からないまま、思った通りを口にします。そのことが相手の怒りを生むことも少なくありません。また、アスペルガー症候群の子どもには不器用な子どもが多いため、からかいの対象になりやすいと言えます。

相手が悪意を抱いているかもしれないということを想像する力が乏しいため、なぜ相手が自分に意地悪するのかが理解できず、ストレートな反応をしたり反応が出なかったりすることが多く、そのことがいじめを繰り返させる原因になります。

●相手の感情を大人は教えることが大切

アスペルガー症候群の子どもは相手の身振りや表情から感情を汲み取ることが苦手です。言葉で表現されないと分からないと言えます。しかし、アスペルガー症候群の子どもは知的な遅れはありません。言葉で説明されれば十分理解します。

保護者や周囲の大人は、アスペルガー症候群の子どもに対人関係を築くコツを言葉で丁寧に説明することが大切です。その際、「相手の気持ちを考えて動きなさい」というような抽象的な指示の出し方は控えましょう。相手の気持ちが推し量れないから問題が生じているのです。

「こう言ったら相手の人はこのように感じるから、これこれの言い方をすると良いよ。」というように、相手の反応を説明し、望ましい言動を教えるのが効果的です。

できれば、望ましい言動を具体的に示しましょう。してはいけないことだけを示しても、指示が十分に伝わらないことがあります。禁止された言動以外の言動が全て選択の対象になってしまうためです。

定型発達の子どもなら、状況に応じて取捨選択できるところでも、アスペルガー症候群の子どもは状況を読むことができません。いたずらに迷ってしまうことが少なくありません。

●大人は情報を共有することが大切

アスペルガー症候群の子どもは、しばしば大人の目が届かないところでいじめの対象になっています。そのために自己評価が低くなったり攻撃的になったりします。表面に現れた子どものサインだけに目を奪われず、背景にある子どもの困っているという思いを受け止めることが大切です。

アスペルガー症候群の子どもが日常生活でどのような点に困難さを抱えているのか?周囲の大人は情報を共有することに努めましょう。アスペルガー症候群の子どもの抱える問題は、主に集団生活で顕在化します

学校生活、それも子ども同士でマニュアルの無い付き合いをすることになる休み時間や登下校の途中で問題が生じやすいと言えます。教員の目が届きにくい時間です。保護者は教育現場に全ての対応を強要するのではなく、問題を共有するという姿勢で学校と連携しましょう。放課後の様子や休日の交友関係については、保護者から学校にこまめに連絡しておくと良いでしょう。

子どもにとっては教室の内も外も関係ありません。友達との付き合いは切れ目が無いのです。アスペルガー症候群の子どもをいじめから守るには、周囲の大人の協力が不可欠です。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

【その他】カテゴリの最新記事