●自殺の危険性は男性の方が高い
うつ病の患者数は女性の方が多いとされています。ただし、症状が深刻化しやすいのは男性で、自殺の危険性は男性の方が高いと言われています。
国立精神・神経医療研究センターが男性自殺者の家族に実施した聞き取り調査があります。死亡時の年齢が20歳以上の男性自殺者69人の例について行われた調査です。33の都道府県で自殺した男性の家族に聞き取り調査を行いました。
69例のうち、死亡時にうつ病に罹っていたことが分かっていたのは33例。この33人の家族に自殺前にどのような様子が目についたかを質問したところ、5つのサインが出ていたことが明らかになりました。
●うつ病で自殺した人が発していた5つのサイン
うつ病に罹っていたことが分かっていた33例について、自殺前に目についた状態を尋ねたところ、以下の5つのサインが発せられていたことが明らかになりました、
1.「好きだったことへの興味を失っていた」
2.「落ち込んでいた」
3.「疲れた様子で元気がなかった」
4.「自分への評価が下がっていた」
5.「睡眠状態が安定していなかった」
「好きだったことへの興味を失っていた」は57.6%。「落ち込んでいた」は63.6%。「疲れた様子で元気がなかった」は69.7%。「自分への評価が下がっていた」も69.7%。
自分は良い夫ではないとか良い父親ではないといったことを口にするようなら、要注意と言えるでしょう。最も多かったのは「睡眠状態が安定していなかった」。うつ病を患っていて自殺した人の81.8%が睡眠薬を必要としていたり増量していたことが明らかになりました。自殺する2週間前くらいからその傾向が顕著になっていたそうです。
●自殺のサインが見られた時に家族にできること
うつ病に罹っていて自殺した人の81.8%が不眠や過眠の症状を示していたことが分かってきました。睡眠状態は、成人男性のうつ病患者の症状では殊に注意を要するものと言えるでしょう。
しかし、うつ病は良く眠れば治るというものではありません。適切な心理療法や薬物療法を併用して治療することが必要な病気です。うつ病の人はなかなか病院に足を運ぼうとしないと言われています。周りの人に迷惑をかけたくないという思いや病気になった自分への苛立ちもあってのことでしょう。家族はうつ病の人を支えながら、受診を後押しすることが必要です。
自殺のサインが現れたら、医療機関に電話して病院に付き添ってあげることも必要でしょう。自己評価が急激に下がったり睡眠状態が不安定になったりしたら、危険性が高まっています。本人が動くのを待っている段階は過ぎたと判断して、積極的に受診につなげましょう。