成長に合わせた支援が大切-自閉症をもつ青年の困難-

成長に合わせた支援が大切-自閉症をもつ青年の困難-

●男の子が青年期になった時

自閉症の子どもは、他者の興味や意思、集団の暗黙のルールを汲み取ることが苦手です。そうした特徴は青年期に達すると、一層大きな問題を引き起こします。青年期には仲間意識が高まりやすいからです。

自閉症の子どもは、クラスの中で浮き上がったり孤立したりしやすいと言われています。仲間に適応することが困難なため、被害感や無力感を抱くことも少なくありません。アニメのキャラクターやインターネット上のヒーローなどに同一化して万能感を得ようとすることも多く、1日の多くの時間をパソコンの前で過ごし、ファンタジーの世界に浸るようになるケースも少なくありません。

青年期になると、社会に出る準備が必要になるため、そのような準備作業に馴染めず、課題を乗り越えられないことから、自己評価を下げてひきこもりになるケースも相当数報告されています。

ひきこもりを始める年齢は18~20歳前後がピークとされています。不安、抑うつなどを訴えて精神科を受診したり、家庭内暴力を起こしたり、近隣への迷惑行為という形で社会への不適応が表面化することもあります。

●女の子が青年期になった時

男の子が青年期になった時ほど、現実回避の行動が目立つことはないと言われています。

しかし、一見したところ、特別問題が無いように思われる場合にも、実際にはコミュニケーションに対してストレスを感じていることは多いとされています。「話のタイミングが分からない」「何を話したら良いのか分からない」ということで悩んでいる女の子は少なくないようです。

また、自閉症の子どもは感覚が過敏なことも多く、髪や肌を触られるのが苦手で美容院にも行けないとか、化粧品が直接肌に触れる感覚が苦手で化粧ができないということもしばしばあります。成人女性として、普通に振る舞えないと悩むこともあるようです。

感情の急激な変化に悩まされることも少なくありません。本人なりのバランスが崩れたように感じたとか、うまく表現できない感情を溜め込んだ挙句として爆発的に感情が表されることがあります。

本人にとっては我慢した挙句のことであっても、些細なことがきっかけになっていると誤解されやすく、感情を爆発させた後で本人は「またやってしまった。私はダメな人間だ。」と悩みます。「ダメな人間だ。」という思いが「死んでしまいたい」という極端な結論に直結しやすいことに大きな問題があります。

●社会参加を成功させるには?

国立精神・神経センターが405人の自閉症の人に調査したところでは、社会参加が「かなりうまくいっている」と回答した人は2.0%、「うまくいっている」11.9%、「普通」44.2%、「あまりうまくいっていない」は32.1%、「まったくうまくいっていない」も9.9%いることが明らかになりました。

自閉症の人に対しては、ライフステージに合わせて具体的な支援のあり方は変えていきながら、切れ目のない支援を続けていくことが望まれています。しかし、調査結果では、成人していくのに合わせた支援がしっかりとなされているとは言い難い実情であることが浮き彫りにされました。

社会参加がうまくいっていると回答した人たちの状況を調べたところ、父親が積極的に育児に関わっている様子が分かってきました。自閉症の子どもを最も身近で支えるのが母親であるとしても、母親の精神的な安定に父親の存在は大きいと言えるようです。

社会全体がサポート体制を整備することの重要性は言うまでもありませんが、家庭内でも母親を孤立させないことが大切です。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

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