親子関係の歪みが原因? 境界性パーソナリティ障害者急増の理由

親子関係の歪みが原因? 境界性パーソナリティ障害者急増の理由

境界性パーソナリティ障害増加の原因は親子関係の歪み?

境界性パーソナリティ障害の増加の背景には、いろいろな要因が指摘されています。最も強調されているのは、両親との関係の歪みです。父親の存在感が乏しくなっていることを原因として指摘する声もあります。家庭の中における父親の存在感が希薄になり、母親との関係で生じた歪みが、直接子どもたちに襲いかかっているとする見解もあります。

境界性パーソナリティ障害は、必ずしも子どもを虐待した家庭で発生しているわけではありません。むしろ、非常に教育熱心な家庭で発生することも多いと言われています。親が「理想の我が子」を育てることに熱中し、自分の願望や期待に沿って、自分の夢を実現することを強く望む場合、子どもは境界性パーソナリティ障害になりやすいと言われています。

理想の我が子を追求する時、親が見ているのは、目の前の我が子ではありません。自分の夢を親は追っています。非常に熱心に子どもに関っているようでも、子どもには充足感が得られません。子どもは敏感に親の視線を感じます。生身の自分を通り越した向こうに親の注目が集まっているのを感じています。

親の感情や行動は子どもに影響を与える

現代は、子育てを楽しまなくてはならないという感覚が広がっています。子育ては確かに楽しいものです。しかし、楽しくないこともあるのが子育てです。「楽しまなくてはならない」という感覚で臨むと、楽しくない瞬間が苦痛になります。楽しくない思いを抱く時、子どもが邪魔者に感じられることさえあります。

親も人間です。常に同じように愛情を子どもに注ぎ続けるのは無理でしょう。イライラしたり落ち込んだりするのは、ありふれたことです。しかし、「楽しまなくてはならない」という感覚が強いと、楽しくない時の心の波立ちが大きくなります。親の感情の波立ちは、子どもに少なからぬ影響を及ぼします。

境界性パーソナリティ障害増加の背景には「核家族化」がある?

かつては、親が行きすぎた関わり方をしていても、祖父母が親をたしなめ、子どもは家の中に逃げ場所を見出すことができました。地域の関わりも密接でした。家庭の問題に近所の人が介在することもありました。

しかし、核家族化が浸透し、個人のプライバシーが過度なまでに尊重されるようになって、家庭は地域から切り離されるようになりました。祖父母の関与も限られる家庭が増えてきました。金銭面の援助に留まる家庭も多くなっています。

親の子どもに対する影響力は絶大です。親子の緩衝材が無くなっているからです。子どもは、親の影響を強く受け、時にはその影響から逃れられなくなります。

自分が望んでいるのとは違った関わり方をされていても、そのことを明確に自覚することすら無い状態で成長していきます。そうして蓄積された不毛さが、思春期に吹き出します。

極度に不安定な気分、極端から極端に走る行動で、親を振り回すことになります。境界性パーソナリティ障害の増加の背景に、親子の緩衝材が無くなっていることを指摘する専門家もいます。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

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