20人に1人が発症!?全般性不安障害の原因と治療

20人に1人が発症!?全般性不安障害の原因と治療

●日々のストレスの蓄積から発症する?

全般性不安障害は、転職や配置転換、離婚、介護、慢性疾患などをきっかけとして発症することが多いと言われています。職場や家庭でストレスがたまったり、健康面で不安を抱えたりすることと関連があると考えられています。

当たり前に過ごしてきた日常生活が変わってしまい、どのような状況に自分が置かれるのかが見通せない不安が、不安障害を表面化させやすいと言えるでしょう。

今まで自分が生きてきた経験から想定できる範囲を超えた変化が起こり、自分が何をしたら良いのかが把握できず、変化がいつ収束するのかを予測できない時、徐々に蓄積された不安が一気に許容量を超えてしまい、その結果として不安障害を引き起こすと言われています。

ただし、同じ状況に置かれても、不安障害を発症する人もいれば不安障害を発症しない人もいます。それはいったいなぜでしょうか。

発症する人と発症しない人の違いとしては、不安に耐えられる程度については、個人差が大きいからだと言われています。たとえば、学校や職場など、100人以上の人の前で自分一人で登壇し、1時間話をする、そういうシーンを想像してください。

あなたならば、1人で1時間100人を前にしてしっかりと話すことは、特に問題ないでしょうか。それとも、絶対にそんなのは緊張するのでできればやりたくない、そう考えますか。人によって、人前での発表を苦にしない人もいれば、できれば避けたいと考える人もいると思います。
つまり、どのような状態がある人にとって不安を異常に増幅させるかどうかは、個人差があり、判断が難しいと言えます。

●カフェインへの感度が高い!?

不安障害の症状がある方はは、カフェインへの感度が高いとも言われています。また、カフェインの過剰摂取は不安障害を引き起こす原因の1つではないかとも言われています。そのため、不安障害の代替的な治療方法としてカフェインを減量するということもしばしば行われています。

ただし、不安障害の患者すべてにおいて、カフェインを減量すると、症状が軽減されるというわけではもちろんありません。カフェインへの感度の高さは、原因に挙げられている可能性の一つです。

甲状腺や副腎の過剰な活動によって不安が引き起こされることも指摘されています。また、患者本人のみならず、周りにいる家族の方にも不安障害を発症することがあり、不安障害の発症には遺伝も何らかの関係があるのではないかとも考えられています。

不安障害の診断の際、検査を行うこと以外に、家族に不安障害の人がいるかどうかということをお聞きすることもあります。しかし、家族に不安障害の人がおらず、甲状腺や副腎に何も問題が無くても、不安障害を発症することはあります。

●原因はまだ解明されていない

不安障害は精神疾患の中では珍しいものではありません。しかし、原因はまだ十分に解明されていません。

脳内で神経伝達物質のGABAやセロトニンが減少していることは指摘されています。不安障害の薬物療法では、GABAやセロトニンの分泌量を調整する薬が処方されます。「解明されない無意識の葛藤に由来する不安」が原因ではないかとする仮説もありますが、仮説の域を出ていません。

欧米の報告では、20~25人に1人が一生のうちのどこかの時点で全般性不安障害を発症するのではないかと考えられています。全般性不安障害は、小児期や青年期に始まるとされていますが、どの年齢でも発症する可能性があります。

不安は徐々に蓄積されます。特定の状況から次第に不特定の状況へと不安を感じる場面が増えていきます。そのことに本人は気づきません。

また、客観的には不安を感じるような状況ではないところで不安を抱えるようになるため、周囲も本人の抱える不安には気づきません。そのため、不安障害を発症する原因は分かりづらいものになっています。

不安障害を発症すると、治療には長い期間が必要とされます。薬を用いて不安症状を抑えながら、カウンセリングなどを並行して治療していくのが一般的な治療となります。

焦らずじっくりと、主治医の先生やカウンセラーの先生と信頼関係を構築し、治療を継続していくことで、症状が出たとしても、自分で執着しないようにコントロールできるようになっていきます。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

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