人生を不幸にする自動思考。認知の歪みとは?- 臨床心理士の解説

人生を不幸にする自動思考。認知の歪みとは?- 臨床心理士の解説

今回は、認知療法・認知行動療法で着目されている「認知」について詳しく見ていきましょう。
言われてみれば当たり前なことばかりかもしれませんが、ぜひ一読していただければと思います。

「認知」というものの仕組みを自分でしっかりと理解して、自分自身の考え方の癖、傾向が分かれば、
どのように自分の考え方を変えていけば、より良い日常を送っていけるか、そういう手がかりが見つかるかもしれません。

では、まず認知という言葉の意味についてご説明していきたいと思います。

認知とは、ものごとの捉え方や考え方のことです。

私たちの感情や行動は、この自分の認知に影響されます。

私たちは何か出来事が起きた時に何かを感じたり、考えたりします。

この時の感じ方、考え方が認知です。

たとえば誰かに怒られた時、「自分が悪かったのかも」とか、「そんなはずはない」とかとっさに考えてしまうことありませんか。

こういった反射的に起きる考え、これを「自動思考」といいます。

そしてこの自動思考からくる物事の捉え方が「認知」です。

私たちは、感情や生理反応を直接はコントロールできません。
汗を意識的に止めたり、心臓の鼓動を意図的に遅くすることもできません。
もうすでに起こってしまった出来事を変えることももちろんできません。

しかし、私たちは、自分の認知のクセを理解し、意識的に認知の仕方や行動の仕方を変えることができます。

意識的に調整可能な認知や行動を変化させ、感情や生理反応を間接的にコントロールして、よりよく生きていけるように考えようという観点から考えられたものが、認知行動療法になります。

認知、自動思考の仕組みについては何となくご理解頂けたかなと思います。

次に、どうやって認知や行動の仕方を変えていけばいいのかというお話をさせて頂ければと思います。

行動の仕方を変えていくことについては、まだ何となくわかる方も多いのではないかなと思います。たとえば、落ち込んだ時に楽しいことをするとか、美味しいものを食べるとか。仕事に打ち込んで考えないようにするとか、そういう対処をされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

では、行動ではなく、認知を変えていくのはどうすればいいのか?についてお話ししたいと思います。

まず第一にすべきことは、自分の考え方の癖はどういうものなのかということを適切に理解することです。

認知にあまりにも極端な偏りがある場合、自分自身の心を傷つけたり、日常生活を円滑に遅れないようになってしまうこともあります。
あまりにも極端な考え方、受け止め方のことを、『認知の歪み』と呼びます。

認知の歪みの代表的な例をいくつかみていきましょう。

・全か無か思考:白か黒か、正義か悪か、0か100かなどと、物事を二つに一つで考えてしまうことです。

完璧主義の方に多い傾向があります。白か黒かと明確に二極化できるものは案外少ないのではないでしょうか。
「100%ではないけど80%までできたから、とりあえずこれでいいか。」と考えれば、
余裕を持って無理しすぎることも少なくなるかもしれません。

・過剰な一般化:何か嫌な出来事が起こった際に、「いつも〜だ」「〜したためしがない」などと、
嫌な出来事を過大捉えてしまう考え方です。

このように考えてしまうと、嫌なことが何度も繰り返し起こっているように感じてしまいます。「ほんとうにそうか??」
「結果的には同じかもしてないけど、前より上手くいっていた部分もあるんじゃないのか」などと、
過去の自分と比較してみても良いかもしれません。

・結論の飛躍:具体的な理由もないのに悲観的にものごとを捉えてしまう考え方 です。

たとえば(出来事)友人の態度がそっけなかった(認知)友人は僕のことを嫌いになったのだ、
といったように考えてしまうことです。「もしかしたら、友人がそっけなかったのは、
何か用事があって急いでいたからかもしれない」などと他の可能性にも目を向けてみましょう。

・すべき思考:「〜すべき、しなければならない」と考え行動してしまう。
うまく達成できなかった場合、自分を責め、自己否定をしがちになってしまいます。自分の軸を持つことは素晴らしいことかもしれません。
しかし、自分自身に過度な制限をかけてしまっている場合もあります。「時と場合によるよね」
といったような柔軟性を持つことも大切かもしれません。

もし現在、物事に対してこのような考え方に囚われてしまって、「苦しい」「辛い」などと感じているのであれば、一度自分の認知を観察してみてください。

コツとしては何かが起きた時にとっさに考えてしまう、「自動思考」に注目してみてください。
あなたの自動思考が先ほど挙げた例のようになっているならば、改善が必要かもしれません。

認知療法・認知行動療法で一つ大切なことは、自分の認知や行動をしっかり観察し、
主にストレス場面での考え方や行動の癖を把握することです。

もし辛い感情をお持ちであれば、その原因の所在を考えてみることが悩み解決の糸口になるかもしれません。

(執筆:Koh 監修:臨床心理士 鏡 元 )

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