リストカット(自傷行為)への誤解と偏見-臨床心理士の解説

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みなさんはリストカットという言葉をご存知でしょうか。

最近ではリストカットを題材にした漫画やドラマ等もあるので、言葉を聞いたことがあったり、どういうものかというイメージはつく方も多いのかなと思います。

今回は、リストカットに代表される自傷行為への偏見や誤解について書かせていただきたいと思います。

リストカットは自傷行為(自分の心身を故意に傷つける行為)の一種で、刃物等で自分の手首を傷つける行為です。

自傷行為自体は昨今かなりメジャーなものとなってきていて、少し古い資料ですが、2003年から3ヵ年に渡って行なわれた高校2年生5755人の調査では、男子5.3%、女子10%に自傷の経験ありとの回答をしている結果(全国高等学校PTA連合会 )が出ていたり、2006年の九州の5大学の学生1626人を対象とした調査の結果、リストカットや壁に頭をぶつけるなど、自傷行為の経験者は7.5%であるという結果も出ています(鹿児島大学)。

そして、世間での自傷行為に対するイメージは、メディアなどを通して実際とは異なったものになっているように見受けられます。

「リストカットする人は、自殺したいとおもっているんでしょ。」
「自分の命を軽くみている人なんでしょ。」

これは半分正しいのですが、半分は全く違うことになります。

確かに自傷の一回目は自殺したいと思ってやることが多いです。そして、初回の自傷をするときは死ぬほど辛い、死んだ方がましと思えるような、それだけ追いつめられるほどの辛い経験をして、行為に及びます。しかし、リストカットの致死率はとても低く、ほぼ死ぬことはありません。

そうすると、本人にとってはやり損ということになるのですが、彼らはここで辛い気持ちがやわらいだり、解離といういわゆる意識がとんだ状態になり、辛い気持ちを忘れられたりすることがあり、自傷が心の状態の不安定をやわらげる効果があることに気づきます。

そして、死ぬためではなく、自身の心を守るため、つまり生きるために自傷をすることになるのです。

自傷の研究をした精神科医のVJ・ターナーは、論文の人が自傷する2つの理由を結論づけました。

・無感覚や解離状態になるため
・不安をやわらげるため

このことから、自傷行為には、恐怖感や不安感に襲われた時に、それを和らげるための効果があると考えられています。

恐怖感や不安感に襲われ、極度のストレス状態のときには大声で泣いてみたり、お酒を飲んだり、全力で走ってみたり、人それぞれ、それに対処しますよね、目的論からしたら同じことなのです。
耐え難い精神的な苦しさをなんとかしようとして自傷行為をしていることを、ぜひご理解ください。

そのような理解が、自傷行為をする人にとって、リストカット以外の精神的苦痛への対処法となるかもしれません。

「そんなことやめろ!」などといっても本質的な解決策にはなりません。

むしろ、それはその人の生きるための生存戦略を奪う結果になることもあります。

ただし、自傷行為はそれ自体に身体的なリスクがある行為です。

また、繰り返すうちに耐性がついてしまうため、行為がエスカレートし、意図せず死に至るケースもあります。

ですので、行為をしていることではなく、その行為をしてしまうほど精神的に追い詰められている状態にたいして対処し、ゆくゆくは自傷から離れていくことを目標にしていくことが重要です。

なかなか、自傷行為をする方は、自分自身悩みを誰かに打ち明けることが苦手な方が多いようです。

周りからの理解が、その人が自傷から距離を置き、より豊かな人生を送るために、背中を押すことができるかもしれません。

(執筆:Koh, 監修:鏡 元(臨床心理士)

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