境界性パーソナリティ障害とは何の「境界」なのか?

境界性パーソナリティ障害

濫用されている境界性パーソナリティ障害

近年急速に知られるようになったパーソナリティ障害が、境界性パーソナリティ障害です。他にどのようなパーソナリティ障害があるのかを知らなくても、境界性パーソナリティ障害という言葉を知っているという方も多いのではないでしょうか。

「ボーダーライン・パーソナリティ」という呼び方でも知られています。心療内科や精神科の医師が対処困難と感じたパーソナリティ障害は、とりあえず境界性パーソナリティ障害と診断する傾向があると指摘する専門家もいます。

今日、境界性パーソナリティ障害との診断が濫用されている傾向もあり、混迷の度合いを深めているパーソナリティ障害と言えます。

治療の対象になったのはカーンバーグの研究から

パーソナリティ障害が医学的治療の対象と考えられるようになったのは、1950年代末頃からのことです。先駆的な研究はアメリカで行われました。第二次大戦で戦勝国となったアメリカでは、経済的な繁栄と民主主義が爛熟期を迎えていました。自己本位的な空気が高まっていたのが、1950年代末のアメリカです。

その頃から、不適切で激しい怒りを爆発させ、時に自殺を企図する患者が、精神病棟やクリニックで治療者を振り回すようになってきました。社会的な関心が高まり、そのような状態を理論化する試みがなされました。

今日、境界性パーソナリティ障害と目されている人たちの行動を理論化したのは、カーンバーグです。カーンバーグは、「境界性パーソナリティ構造」と名付けて1967年に当時社会問題化しだした極端な行動に走る人たちの状態を理論化しました。

パーソナリティ障害が、社会の中で無視できない広がりを見せだしたことを示す出来事と言えるでしょう。そして、理論化されたことで、パーソナリティ障害がようやく治療の対象になったとも言えます。

「境界」とは精神病と神経症の境界性という意味

衝動性の強い行動は、従来道徳的な観点から評価されてきました。道徳的な評価を除外して症状を詳細に検討し、理論化したことで、精神病や神経症は医学的な治療の対象となりました。

パーソナリティ障害も、はじめのうちは医学的な治療の対象とはされていませんでした。社会問題となるほどの広がりを見せるようになって、漸く道徳的な評価抜きに理論化されるようになりました。治療の対象として最初に理論化されたパーソナリティ障害が、境界性パーソナリティ障害です。精神病と神経症の境界という意味で「ボーダーライン」と呼ばれるようになりました。

1980年に出されたアメリカ精神医学会の診断基準で最初に1つのまとまったカテゴリーとして採用されたパーソナリティ障害も、境界性パーソナリティ障害です。診断基準に加えられたということは、パーソナリティの問題が時に治療の対象になるということを表す画期的な出来事と言えます。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)