高い確率で「トラウマ」をもっている?パーソナリティ障害患者とPTSDの関係

パーソナリティ障害とPTSD

PTSDとパーソナリティ障害の関係を考察したハーマンの研究

パーソナリティ障害では、遺伝的な要因よりも、環境的な要因が及ぼす影響の方が深刻な問題をはらんでいると、現在、専門家の間では考えられています。環境的な要因として、心的外傷後ストレス障害(PTSD)との関係を考察した研究があります。

その中でも高い評価を得ているのが、ジュディス・ハーマンの研究です。ハーマンは、もともとPTSDとパーソナリティ障害との関係を調べたわけではありませんでした。PTSDの症状を詳細に調べ、PTSDからの回復の過程を克明に描き出しました。調査対象としたのは、家庭内暴力やレイプの被害者、戦争の帰還兵などです。そうした人たちの臨床記録を基に、ハーマンは『心的外傷とその回復』を書きました。

この書物は、PTSDばかりではなく、PTSDとパーソナリティ障害との関係を考えるうえでの金字塔とみなされています。書物の中で、ハーマンは、PTSDの患者に特徴的なパーソナリティの問題が見られること、それが境界性パーソナリティ障害などとして扱われていたことを指摘しています。

パーソナリティ障害の患者は高い割合で外傷的な体験が見られる?

ハーマンの研究を受けて、パーソナリティ障害とPTSDの関係について多くの研究がなされました。精神科クリニックに通院している患者を対象にした研究も行われています。

精神科クリニックに通院中の患者を対象にした研究では、何らかのパーソナリティ障害が認められたケースについて、小児期・青年期に受けた心的外傷体験の有無を尋ねるという調査を行っています。その結果、全般的に高い割合で外傷的な体験が見られることが分かりました。

パーソナリティ障害の中でも、境界性パーソナリティ障害では、他のパーソナリティ障害よりも、身体的虐待や性的虐待が多いということが報告されました。ちなみに、境界性パーソナリティ障害の患者に多く見られたPTSDは、最も多いのが身体的虐待、ついで犯罪被害、事故、性的虐待、暴力や死の目撃と続きます。

虐待やいじめの影響も

身体的虐待は、境界性パーソナリティ障害以外にも、妄想性パーソナリティ障害・失調性パーソナリティ障害・反社会性パーソナリティ障害で多いことが指摘されています。性的虐待は、境界性パーソナリティ障害以外に演技性パーソナリティ障害でも見られます。

精神的な虐待の影響も深刻で、どのパーソナリティ障害でも高頻度で見出されています。無関心という形をとる精神的なネグレクトの影響は、回避性パーソナリティ障害やシゾイド・パーソナリティ障害に多く見られます。

親子関係の歪みだけでなく、同年代の子供たちからのいじめもPTSDとなります。妄想性パーソナリティ障害・反社会性パーソナリティ障害・回避性パーソナリティ障害などでは、いじめを受けているケースも少なくないとされています。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)