根本的な原因は自尊心にある!? 摂食障害発症の影にひそむ心の闇

摂食障害と自尊心

●摂食障害の典型的な発症の仕方は?

中等度以上の摂食障害の患者を数多く治療している医療機関によると、摂食障害を発症したきっかけは、ちょっとした挫折の体験であることがほとんどです。しかし、「ちょっとした」こととは、本人はなかなか自分で思うことはできません。

挫折は大きく心にのしかかります。輝かしい存在だったはずの自分、あるいはもっと自分はこうありたい、そういう理想とは程遠い自分について容認できません。「この挫折感をなんとかして払拭しなくては!」そのように思ってこだわりを持つようになることの一つが、ダイエットです。スリムな体形を手に入れようとします。そしてスリムな体形を手に入れると、その状態に満足せず、さらに痩せようとして次第に食習慣が異常になります。

異常な食習慣によって、些細なことで体重増加が生じます。体重が少しでも増加すると、肥満への恐怖に一層とらわれるようになります。そのストレスから、人によっては拒食症から過食症へと移行します。過食が始まると、自己嫌悪や抑うつ状態に陥ることも多く、それがきっかけとなって過食するという悪循環に陥ります。

●摂食障害は食欲の病気ではなく、自尊心の病理?

摂食障害の心理的研究に早くから取り組み、治療に大きく貢献した精神分析医のヒルデ・ブルック氏は、摂食障害を「これは食欲の病気ではありません。人からどう見られるかということに関連する自尊心の病理です。」と述べています。

摂食障害の患者は、他人からどう評価されるかということに強いこだわりを持っています。一見して分かる価値あるものへの要求が強いのが特徴です。学歴、職業、地位、才能、ブランドなどを求める気持ちが通常よりも強いことが指摘されています。

最も身近な「一見して分かる価値ある行為」がダイエットです。誰もが望み、簡単には達成しない目標、しかも、成果が一見して分かるのが、ダイエットです。ダイエットは、食べたい気持ちを克服し、運動に励むといった努力が必要です。ダイエットに成功すれば、他人の賞賛を得られます。輝かしい自分を手に入れられるのです。

●摂食障害患者にとって、痩せることは「勝つこと」?

ダイエットを始めるきっかけが異性との交友関係ということは、もちろんあります。しかし、それほど多くはありません。痩せること自体に価値があり、そのために努力しなくてはならないからこそ、痩せることにこだわるのです。痩せることは「勝つ」ことであり、体重が増加することは「負ける」ことになります。

「負けたくない!」摂食障害患者は、負けず嫌いです。現実の生活では自分は「負けている」と思っています。「せめて痩せていないと、取り柄が無い!」と思い詰めます。

痩せることを追求する女性にとって、競争相手は女性だと言われています。男性に好意を持って欲しいからという理由からダイエットを始めたにしても、摂食障害を発症した時点で、男性の目は意識から消えていきます。「負けたくない」という思いが痩せることを追求させていくのです。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)