女子生徒はなぜ自殺したのか?いじめによる精神状態の変化と自殺に至る理由をWHOの世界自殺レポートを引用して臨床心理士がご説明します。


いじめによる自殺事件とその後の検証や調査などの続報は定期的にチェックしているのですが、今回改めて少し考えてみました。相次ぐ痛ましい事件について、しっかりと考えていくということが再発防止、被害者を一人でも多く救っていくことができるのではないかと思います。2013年の事件ですが、いじめによる自殺であったという報告書が知事に提出されたという報道がありました。

「お前が踊れんとが悪かろがー」…女子生徒自殺

報告書の概要によると、女子生徒は13年4月、自宅で首をつって自殺。携帯電話のメモには「つらい学校生活を送っていた」「皆の言葉が痛い、視線が痛い」「消えたい」など遺書を思わせる文言が残されていた。

誰にも相談できず、話すことができなかったものの、携帯電話にはメモが残されていたようです。その内容を、他の誰かにメールで送ったり、言葉で伝えたところで、きっと解決はしない、改善はしない、そういった絶望を感じていたのかもしれません。とてもつらく、孤独で、どうしていいかわからず、彼女の苦悩や絶望を想像すると、たいへん心が痛みます。

調査委は、〈1〉「全然踊れていない」とみんなの前で言われた〈2〉「顔がキモイ、動きが鈍い」といった言葉を投げかけられた〈3〉泣き出すと「お前が踊れんとが悪かろがー」と言われた〈4〉踊れない姿を携帯電話の動画で撮影され、「マジうける」と笑われた――など9項目をいじめと認定。

このような形で、具体的にどういう行為、言動がいじめであるかを具体的かつ明確にすることは、再発防止、いじめによる被害者と加害者を明示的にするための一つの基準にはなりえると思います。本来的には社会通念や常識、モラルに基づいてという部分はあるのですが、抽象的でわかりづらい場合もありますので、こういう形でどういうケースがいじめであるのかを具体的に示しておくことに意味はあると思います。

そのうえで、「自尊感情が低下し、強い孤立・孤独感、つらい状況への絶望的な気持ちなどが重なり、死の選択につながった」と結論づけた。

『いじめぐらいでは死なない』『いじめで死ぬのは弱いからだ』という考え方は、数々の先行研究からも否定されており、事実ではありません。

いじめの被害者は時として、強い孤立、孤独感、そしてなにをやっても改善しないという無力感を感じます。そしてその中で、絶望し、自殺につながることもあるという事実は確かに存在するのです。

今回このような悲しい事件を専門家が調査をした結果として、いじめによって人間は自殺することはあり得るということが明確に報告書、報道によって周知されることによって、こういう事実がもっと多くの人に知って頂ければと切に願います。

今回は、臨床心理士の立場から、いじめによる精神状態の変化と、自殺に至る理由についてお話しさせて頂きたいと思います。

参考文献として引用するのは、WHO(世界保健機関)による世界自殺レポートです。

世界自殺レポートとは、多部門による公衆衛生アプローチとして、包括的な自殺. 予防戦略の発展や強化を各国に推奨し、支援することを目的とし. て、WHO(世界保健機関)がはじめて作成したものです。

WS000010
自殺を予防する-世界の優先課題
※リンク先はPDFファイルです。

すごく内容が濃く、ページ数も多いファイルですが、今回は重要な部分のみ引用しています。

差別と自殺の関連性の例としては、以下があげられる。
• 収監中や拘留中の人々(72)
• レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックスであると同定された人々(73)
• いじめ、ネットいじめ、仲間いじめの影響を受けた人々(74)
• 難民、亡命希望者、移民(75)

このように、社会的弱者やマイノリティへの差別と自殺の関連性が示されています。
さらに具体的には以下のような記述もあります。

孤立は、最も近い社会圏(social circle)から分断された感覚を持つときに起きる。そのような社会圏とは、パートナー、家族、仲間、友人そして重要な他者にあたる人々である。孤立はしばしば抑うつや孤独感、絶望感を伴う。孤立感は、負のライフイベントや他の心理的ストレスを親しい人と分かち合えないときに生じることが多い。そして他の因子と合わさって、自殺関連行動の危険の増大につながる

つまり、人は孤立することにより孤独感、絶望感を感じます。そして、孤立感や絶望感は心理的ストレスとなり、様々な他の要因とも重なることで、自殺関連行動を起こしやすくなるということが述べられています。

自殺関連行動は、支援資源を欠いた社会的背景のなかで、個人の心理的ストレスへの反応として起こることが多く、満たされた状態(well-being)や人々の結束がより広く欠如している状態を反映しているのかもしれない。社会的な結束とは、社会における複数のレベル、つまり個人、家族、学校、近隣、地域社会、文化的集団や社会全体で、人々をまとめる構造のことである。緊密な個人的かつ永続的な人間関係や価値感を共有する人々は、概して目的意識や安心感、そしてつながりを感じるものである。

社会における集団やあるグループにおいて、支援がないことによって個人が心理的なストレスを感じて、自殺に関連する行動を起こしやすいという記述があります。人間は、社会や自分が属しているグループで繋がりを感じながら生きるものです。しかしながら、そうした感覚がないと、孤独感や寂しさは、心理的ストレスとなり、生命を危険な状態にさらすことも十分にあり得るということが述べられています。

自殺を予防するための方法として、WHOの自殺レポートでは最後に以下のような提言があります。

自殺予防には、ビジョン、計画、そして一連の戦略が必要である。こうした取り組みはデータに基づいたものでなければならない。すべての国で通用するような共通の戦略はないにしても、その指針となる概念的なフレームワークは、文化の特有性を重んじた形で創造されるべきである。また自殺予防の目標は継続的な取り組みによってのみ達成可能となることから、持続的なリーダーシップは不可欠である。社会変革を創造するためには、重要な要素が3つある。それは、知識(科学的根拠と実践に基づく)、公的支援(政治的意志)、そして自殺予防目標を達成するための国としての対応の社会的戦略である。

いじめを完全になくすということは難しいとしても、いじめを発見するという取り組み、いじめに苦しめられている人が助けを求めることができる仕組み、いじめにより孤独感を感じさせないということに焦点を当て、しっかりと対策を練っていく必要があると思います。

もし自分がいじめられていたら、1人で悩み苦しむことなく、ぜひ誰か相談できる人を探してください。もしどこにも相談できないと追い詰められているようでしたら、ぜひ私たちココオルをご活用いただければ幸いです。一緒に考えていきましょう。

臨床心理士 鏡元(かがみげん)

【関連悩み相談】
17歳女、私立の高校に入学後いじめられ、母の病死も重なり不登校です。
小さい子供が二人居る専業主婦、生まれつきの身体障害があり小学生の頃からいじめられていました
生きることにつかれちゃいました、太っていることでいじめられます。