うつ病診断の際に病院でチェックされる9つのこと

うつ病診断の際に病院でチェックされる9つのこと

●診断基準としてよく用いられるDSM-IVとは

うつ病のようなメンタル疾患の診断基準については、「曖昧じゃないの?」「患者が診断書を書いて欲しいと要求すると簡単に書いてもらえるんでしょ」というような誤解が多いようです。

血液検査をするわけでもなく、レントゲンを撮るわけでもなくわかりづらいことで、周囲から診断基準に対して厳しい言葉を投げかけられて傷つく人は少なくありません。

現在、うつ病の診断は、米国精神科医学会の診断基準DSM-IVによって行われることが多いです。必須と目される症状と選択的にカウントされる症状の数が基準を超えると、うつ病と診断されます。客観性を持たせるために工夫された診断基準ですが、問診をする医師の力量も問われる部分が小さくないのも事実です。

初めて精神科や心療内科を受診する人は、何をみられているのかが分からないと不安を感じるかもしれません。メンタル疾患にかかってはいないと思いたい気持ちがあっても不思議ではありません。

受診を有意義なものにするには、医師が努力すると同時に患者の方でも何を訴えると良いのかを理解しておくことが大切になります。うつ病の診断のために医師が問うことはどのようなことなのか?その問いは何を確認しようとして発せられたものなのか?DSM-IVに沿って整理しておきましょう。

●問診でチェックされる9つのこと

1.抑うつ気分がどれくらい続いているか?

「今、憂うつですか?いつぐらいから憂うつですか?」と質問されても答えに窮してしまうかもしれません。うつ病はいつしか前の自分とは違っていたと気づくのが普通です。はっきりとしたきっかけが分からないのが大半です。今どうかということには答えられるとしても、いつからかということには答えられない場合は少なくありません。

「1番ストレスになっていることはどんなことですか?」というような問いから始まって、患者が具体的なことを振り返りやすく形を変えて質問するのが適当とされています。また、そうした問いに答える様子からも抑うつ気分の程度が判断されます。

2.喜びの喪失が認められるか?

仕事、趣味、対人交流などに興味や関心を失った状態というのも、うつ病の中心的な症状です。以前は楽しめていたことは何だったか?そのものに対して今はどのような気持ちを抱いているのか?従来からの変化がチェックされます。

3.食欲の低下や体重の減少はあるか?

ほとんど毎日続き、体重が1ヶ月で5%以上減少すると、うつ病と診断されることが多いとされます。

4.不眠。寝つきはどうか?

一旦寝ついた後で目覚めることはあるか?目覚めた時に再び寝つくのにどれくらいの時間がかかるか?睡眠状態が問われます。うつ病では、途中覚醒、早朝覚醒が特徴とされています。

5.行動制止はあるか?

通勤、軽作業、家事、挨拶程度の人付き合いなど、日常のルーチンワークを行う際に辛いと感じることがどのくらいあるのかが問われます。

6.疲れやすさはあるか?

「自律神経失調症」と診断されている場合のかなりの割合がうつ病の可能性があるとも指摘されています。

7.罪の意識と無価値観はあるか?

「悪いのは自分である」と過剰に自責の念を感じるのがうつ病の特徴です。他人を責めたり責任転嫁をしたりするのは、うつ病の場合には見られないとされています。

8.思考力低下、決断困難はあるか?

患者自らが最も強く自覚しているのがこの点です。「頭が働かなくなった」と感じる人が多いようです。出口の見つからない焦りから自殺を考えることもあります。

9.自殺念慮はあるか?

積極的に自殺しようとはしていなくても、「死ねたら楽だろうな」程度の考え方は持っている人が多いと言われています。自殺について問うことをタブー視する人は少なくありませんが、リスク評価という観点から、うつ病の診断では積極的に質問する必要があるとされている事柄です。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

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