●うつ病に一生のうちで罹る確率は16人に1人
うつ病を一生のうちで経験する確率は6.3%とされています。およそ16人に1人の確率です。友人や会社の同僚の中にひそかにうつ病で苦しんでいる人がいるかもしれません。今はうつ病に罹っていなくても、いつうつ病に罹ってもおかしくない数値です。誰もが罹る可能性がある病気がうつ病だと言えるでしょう。
少し前までは、うつ病にかかるのは「周囲に甘えているからだ」「精神的に弱いからだ」と捉える人が少なくありませんでした。
そのような誤解は、うつ病に罹った人から適切な治療を受ける機会を奪うものです。また、自分がうつ病に罹ってしまった時、早期の治療を阻む考え方です。うつ病に対する正しい認識を持ちたいものです。
●うつ病は脳の情報伝達にトラブルが起こる病気
うつ病にかかると、憂うつに感じたり気が滅入ったりすることが多くなります。そのため、心の病気と思われがちです。精神面に大きな影響を及ぼす病気という点で、心の病気ととらえても間違いではありません。ただし、うつ病になると、脳内の神経伝達物質のうち、セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンが減少することが知られています。
セロトニンは心のバランスをとります。ノルアドレナリンは気分を高揚させます。ドパミンはやる気を起こさせたり、目標を達成した時の満足感や興奮などを作り出します。健康な時には、これらの神経伝達物質は脳内でバランスを保って分泌されます。そして、脳や体の機能を上手にコントロールしています。
過剰なストレスが加わると、セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンの分泌量が減ってバランスが崩れ、憂うつに感じやすくなったり、やる気が起きなくなったりします。うつ病の発症です。
●急激な環境の変化に対応できないことが引き金に
過剰なストレスは、親しい人との死別や病気、離婚などの悲しい出来事や辛い出来事ばかりが原因ではありません。昇進、結婚、子どもの自立といった喜ばしい出来事が原因となることもあります。喜ばしい出来事であっても、それによって生活環境が大きく変化し、その変化に対応しきれないとストレスになります。
自分なりに変化に対応しようとしてもうまくいかない場合、喜ばしい出来事であってもストレスの原因となることがあります。悲しい出来事や辛い出来事なら周囲もうつ病に気づきやすいでしょうが、喜ばしい出来事だと周囲の人も本人も気づきにくいので、注意が必要です。
うつ病は「心の風邪」と呼ばれることもあります。しかし、風邪のようにひき始めたのがいつかということは分かりません。いつの間にか「以前の自分と違う状態になっている」ということに気づくのが、うつ病です。うつ病が原因で気が滅入り、集中力を欠いたりミスを重ねたりしているにもかかわらず、「もっと頑張らねば」と自分を追い詰めてしまう人もいます。誰もがなる可能性があるうつ病。正しい認識を持ち、うつ病を悪化させないようにしたいものです。