自閉症のお子さんとのコミュニケーションには絵カードが効果的?

自閉症のお子さんとのコミュニケーションには絵カードが効果的?

●絵カードはどういう目的で使うか?

自閉症のお子さんには視覚に訴える物を使った方がスムーズにコミュニケーションがとれると言われています。言葉を使える年齢になったとしても、重度の自閉症のお子さんでは、言葉がコミュニケーションの道具であるということを忘れてしまうこともあります。
たとえば、食事中にお茶が飲みたくなった時、お茶を飲んでいる他の人を見て「わっ」と言ったりします。「お茶をください。」という言葉を言える段階に達していても、「お茶をください。」という言葉が自分の要求を相手に伝える手段だということを忘れてしまうことがあるのです。

そのような状態がしばしば見られる子どもに対しては、要求を伝える手段として絵カードを用いるのが良いです。食卓にお茶の絵カードが置いてあれば、その絵カードを渡したり見たりすることで、自分の意思を相手に伝えることができるようにします。すると、自分の意思を相手に伝える手段が見つからずに困るという事態を避けることができます。

何かやりたいこと、ほしいという要求を言葉で伝えることができる子どもには、スケジュールを理解させるのに絵カードを使うと効果的な場合があります。自閉症児は想像力に障害を抱えています。予定が分かっていないと、ひどく混乱してパニックを起こすことも少なくありません。

明日どこに行くのかというようなことを理解させるため、毎日スケジュール表を確認させるようにしましょう。スケジュール表に絵カードを貼ったり、子どもに絵カードを貼らせたりすると、そのスケジュール表を見て子どもは安心します。

●絵カードには写真とイラストのどちらがいい?

子どもによって写真とイラストのどちらが受け入れやすいかは異なります。写真の方が理解が深まる子どももいれば、イラストの方が好きな子どももいます。子どもの反応が良いものを使ってみましょう。

写真は詳細に状況をつかめるというメリットがあります。初めての環境で、子どもの緊張が高まりそうな場合には、事前に撮っておいた写真を手順書仕立てにして見せると、当日の混乱が少なくて済みます。しかし、写真には多くの情報が含まれているため、そのような情報が妨げになって逆に混乱する場合もあります。違いに引っかかって動けなくなることもあります。

イラストは詳細な情報を省いているので、違いに混乱して動けなくなるという危険性は少ないと言えます。違う所を利用する可能性が高いトイレなどはイラストの方がスムーズに動けることが多いです。今は無料でダウンロードできる絵カード用のイラストもたくさん用意されていますので、状況に合わせて子どもにとって過不足なく情報を伝えられる視覚教材を選ぶようにしましょう。自閉症児は、大人が想像している以上に視覚教材から強い影響を受けています。カードを使う目的によって写真とイラストを使い分けると良いでしょう。

●少しずつ文字も加えていきましょう!

文字を使えるようになると、いつでもどこでも誰とでも意思を伝え合うことができます。意思伝達の機会が増えます。絵カードに最初はひらがなを書き添えるようにしてみましょう。

すぐには読めるようにはなりませんが、目に馴染んでいくことで、ある日読めるようになります。小学校で正式に文字の勉強をするようになり、それまでに書いてあった絵カードの文字を読むようになったという話も聞かれます。

最初はひらがなだけ。そして、次第に漢字も加えていきましょう。文字を使って意思伝達を図れることは、自閉症児の表現の機会を増やします。絵カードと併用する形で徐々に慣らしていってあげましょう。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

【発達障害】カテゴリの最新記事