自閉症の診断にはどんな検査がされる? 唾液で調べられる可能性も

自閉症の診断にはどんな検査がされる? 唾液で調べられる可能性も

●現在行われている検査

健診で我が子が大泣きしてしまい、言葉も出ていないことから「自閉症の可能性がありますね」と医師に言われてしまったけれど、納得がいかないというケースは少なくないようです。「こんなに短い時間で分かるものなの⁉︎小さい子が初めての場で大泣きするのは良くあることじゃない!」と反発するお母さんの声はしばしば聞かれます。

しかし、いたずらに様子を見ているだけでは、本当に我が子が自閉症であった場合、子どもが困ることになります。療育が必要な状態なら、早期に適切な療育が受けられるようにしてあげたいものです。

自閉症に似た状態を示す別の病気もあります。別の病気の可能性は無いのか?本当に自閉症なのか?保健所や発達障害者支援センターに相談して適切な専門的診断が受けられる病院を紹介してもらいましょう。

自閉症が疑われると、病院で行われる検査でポピュラーなものは知能検査です。子どもであればWISC-Ⅲ、大人であればWAIS-Ⅲと呼ばれる知能検査が行われます。

他にも、補助的な役割の検査としてCARSやPEP-3といった自閉症診断検査を行うことがありあます。

用具を使って子どもが楽しく遊ぶ様子を直接観察しながら自閉症かどうかを診断します。自閉症の診断は、現在、子どもの行動の特徴、特に社会性から判断されます。病院では、他に脳波検査を行うことが多いようです。自閉症は比較的高い割合でてんかんが合併すると知られているからです。てんかんが合併しているか否かを調べるために脳波検査をします。

●いずれは唾液で調べられるようになる⁉︎

行動特徴で判断を下している現在の自閉症検査。保護者は納得しても、祖父母になると、孫の障害を認めにくいというケースは残るようです。孫の障害を認めまいとして自閉症の子どもに無理強いし、その結果、子どもが自傷行為を示すようになってしまったという話も聞かれます。

客観的な診断方法が欲しいという要望に応える検査が、現在アメリカで研究されています。唾液で分かりそうだという報告がなされています。唾液を分析することで自閉症の診断が可能になるかもしれないという報告をしたのは、アメリカのクラークソン大学とニューヨーク州立大学プラッツバーグ校の研究者です。

自閉症と診断された子どもと定型発達の子どもの唾液を比較。その結果、自閉症の子どもの唾液では、9種類のタンパク質が顕著に多くなっている一方、3種類のタンパク質が存在しないか少なくなっていることを発見したそうです。研究チームでは、今後サンプルを増やして確認を慎重に行いたいとしています。

●診断を受ける意義

自閉症の可能性を指摘されて直ぐに受け入れられる保護者はまずいないでしょう。激しく動揺し、反発し、自閉症と思えないさまざまな日常生活の場面を思い浮かべることでしょう。

自閉症の診断は現在、子どもの行動特徴で下されています。健診では確かに短い時間で判断が下されます。専門の病院を受診して、てんかんを合併していないことが確認され、検査の結果、「もう少し様子を見てみましょう」と言われることもあるでしょう。しかし、診断が確定することもあります。

診断は保護者の心に重くのしかかるものに違いありません。限界の告知のように受け止められるかもしれません。保健所や自閉症協会といった社会資源を上手に活用して保護者が元気になりましょう。そうして自閉症の子どもを受け止め、子どもが集団に入って生活する時のストレスを少しでも軽減できるような療育を受けるようにしてあげてください。

診断が確定することが目的ではありません。子どもの実情に合わせたケアを開始するスタートラインが診断です。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

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