さかなクンにまつわるアスペルガー症候群の噂の正体は⁉︎

さかなクンにまつわるアスペルガー症候群の噂の正体は⁉︎

●博識なさかなクン

テレビ番組などで有名なお魚タレントのさかなクン。

ユニークなフグの帽子や、いつもハイテンション、独特な喋り方や一貫した魚への愛情などからネット上では「アスペルガーでは?」とも噂されてもいるようです。

オフィシャルサイトの年齢に「成魚です」と記していたり、初恋の相手を魚だと言っていたり、並々ならぬ魚へのこだわりの強さを感じさせます。

中学時代には、吹奏楽のことを「水槽学」と間違えて見学にいったというエピソードやアルバイトも魚に関することしかしていないという徹底ぶりからも、特定の分野に強いこだわりを示すアスペルガー症候群の特徴が透けて見えると言う人もいます。

さかなクンが熟知している魚の種類は5000種以上とも言われています。普通の人の想像をはるかに超える博識ぶりです。その豊富な知識から、2006年には東京海洋大学客員准教授に就任。また、特定非営利活動法人自然のめぐみ教室海のめぐみ教室室長も務めています。

●どうして「さかなクン」なの?

さかなクン。本名、宮沢正之さん。1975年生まれです。高校3年生だった1993年にバラエティ番組「TVチャンピオン」の「第3回全国魚通選手権」に出場し、準優勝を果たします。その後も同様の大会に出場して5連覇を達成。殿堂入りを果たします。殿堂入りを機に多くのテレビ番組に出演するようになります。

「さかなクン」の名前は「TVチャンピオン」でレポーターを務めていた中村有志さんがつけたものです。お馴染みのハコフグの帽子は、TBSがさかなクンの頭に合わせて作らせたものとか。

●キレていなかったさかなクン

さかなクンはアスペルガー症候群では⁉︎という噂がネットで広まった前後に、実はもう1つ気になる話題が広まりました。さかなクンがテレビで「キレた」という噂です。まことしやかに映像が流されました。しかし、その映像は合成写真であったことが後日判明しました。

アスペルガー症候群の人はキレやすいという思い込みがネットでは広まっているようです。たしかにアスペルガー症候群の人は安定した人間関係を築くことが難しく、対人関係で多くのストレスを抱えやすいとされています。過去のトラブルの記憶から感情が安定しないことに悩んでいるアスペルガー症候群の人は少なくありません

しかし、「アスペルガー症候群はこだわりが強い」「アスペルガー症候群はキレやすい」。だから、驚嘆するような博識ぶりを示し、特徴のある話し方をするさかなクンはアスペルガーで、アスペルガーならキレやすい面があるはず。キレたところを作ってしまえ!という動きがあったことは否めません。

さかなクンは、質問者1人1人の目を見てきちんとアイコンタクトを取りながら対応しています。図鑑で魚のことを調べるのが好きだった少年がさまざまな場面を通して生の魚に触れ、魚への関心を高めて行ったからこその博識でしょう。自分が仕入れた知識を多くの人に知ってもらい、魚への関心を高めてもらいたいという思いが独特の話し方を生んでいるのかもしれません。

純粋な思いで長年培ってきた知識を障害という形で処理して理解しようという風潮は慎みたいものです。偏見を裏付けようと合成写真を流すというのは、いかにも歪んだ行動です。対人関係に悩む多くのアスペルガー症候群患者の生きづらさを土足で踏みにじる行為です。「アスペ」「アスペルガー」という言葉ににじむ蔑視の臭いが払拭されるよう、一人一人が努力したいものです。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

【発達障害】カテゴリの最新記事