アスペルガー症候群だと分かってホッとした~スーザン・ボイルさんの場合~

アスペルガー症候群だと分かってホッとした~スーザン・ボイルさんの場合~

●中年女性のシンデレラストーリーに世界が注目

スーザン・ボイルさん。スコットランド出身の歌姫です。2009年の「第60回NHK紅白歌合戦」にゲスト出演し、「夢やぶれて」を熱唱した姿を記憶している人も少なくないでしょう。

ボイルさんがデビューしたのは同じく2009年。きっかけは、2009年4月11日に放送されたイギリスの素人オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」に出場したことです。初めて舞台に上がったボイルさんの様子は垢抜けせず、受け答えもしどろもどろで、「プロ歌手になりたい」との答えに観客席からは失笑も上がったとか。

しかし、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の挿入歌「夢やぶれて」の最初のフレーズを歌う彼女の声が響くと、観客は一瞬息を呑み、次いで総立ちになって割れるような喝采を送りました。

この番組の模様がYou Tubeなどに転載されると、9日間で1億回を超える視聴回数を記録。全世界から注目されました。中年女性のシンデレラストーリーは、時代の社会現象のレベルに達しました。

●スーザン・ボイルさん、アスペルガー症候群と診断されたことを告白

にわかに世界中の注目を集めるようになったボイルさんには、深刻な悩みがあったと言います。自分の脳には重大な問題があるのではないかという悩みです

子どもの頃、周りと違うことで「おバカなスージー」と呼ばれ、いじめられていたボイルさん。分娩時に酸素不足に陥って脳に障害を負ったと言われてきたそうです。「でも、それだけではないのでは?もっと深刻な問題があるのではないか⁉︎」ボイルさんは、感情の不安定さを抑えきれない自分、人を信じられずにバリアを築いてしまう自分への不安感が増していったと言います。

深刻な症状ではないかとの不安感から受診したスコットランドの専門医が下した診断は「アスペルガー症候群」その診断を受けてボイルさんはホッとしたと言います。アイコンタクトが苦手、見知らぬ人と打ち解けることが困難、些細な言葉に過剰に反応してしまうなど、対人関係を築いたりコミュニケーションをとったりすることに問題を抱えていた原因がアスペルガー症候群という障害だと分かって、ボイルさんは対処法を学んだと言います。

●人を自分の人生に迎え入れたい

診断の事実を公表したのは、自分のことを理解して接してもらうためだったとボイルさんは説明します。自分1人では強くなれない。周りに支えてくれる人たちがいれば大丈夫。」とボイルさんは考えて、診断の事実を公表したと言います。

「自分のこと、問題を抱えた人って見るようにしている。」とも語るボイルさん。自分が日々感じる違和感をうまくやり過ごす対処法を工夫しながら、自分の障害を理解してくれる周りのスタッフの協力を得て歌手活動の幅を広げています。

「私は、人を自分の人生に迎え入れたいと願っているのよ。」とボイルさんは語ります。障害を正面から受け止めるボイルさんの生き方が、彼女の人生に新しい夢を与えることでしょう。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

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