ADHDと遺伝子の関係 イギリス研究チームが明らかに

ADHDと遺伝子の関係 イギリス研究チームが明らかに

●ADHDに対する偏見

不注意、衝動性、多動性の問題を抱えるADHDは、長いこと偏見にさらされてきました。本人に対しては「努力不足」「だらしがない」といった誤解がなされてきましたし、保護者に対しては「子どものしつけがなっていない」との批判が寄せられてきたようです。

そのため、ADHDを抱える本人は自己評価を下げ、保護者は子育てに自信を無くしがちでした。今では、ADHDは親のしつけのせいではないことが明らかになっています。

ただし、新たな偏見も生じています。親がADHDなら子どももADHDではないかという偏見です。ADHDの人が家庭を持ったり子どもを持とうとする時に障害となりかねない偏見です。

●家族性が認められるADHD

アメリカで行われた調査によると、父親か母親がADHDならば、その子どもにADHDが現れる確率は最大50%とされています。

また、兄弟姉妹にADHDの子どもがいると、兄弟姉妹にADHDの子どもがいない場合に比べて5~7倍の率でADHDが発症するというデータもあります。

そのため、ADHDには家族性が認められると考えられてきました。ただし、ADHDが遺伝するのかどうかについては明確なことは分からないとされてきました。

●イギリスの研究チームが明らかにした遺伝子の問題

2010年、イギリスの医学専門誌『ランセット』にADHDに関する新しい発見が発表されました。イギリスにあるカーディフ大学のアニタ・ターパル教授らの研究チームがADHDの発症と直接的に関連する遺伝子レベルの問題を発見したというのです。

研究を率いたターパル教授はロンドンで会見し、「ADHDは同じ家系内での事例が多いことから、遺伝子要因があるだろうとは長年思われてきた。しかし、今回、初めて直接的な遺伝的連関を発見し、興奮している。」と述べました。

研究チームは、ADHDと診断された子ども366人とADHDではない子ども1047人の遺伝情報を比較。

2つのグループには「コピー数多型」(CNV)と呼ばれる領域で明らかな違いがあることを明らかにしました。

また、ADHDと関連するコピー数多型(CNV)は、第16染色体に集中していることも明らかにされました。

ターパル教授は、「ADHDについては偏見が多く、障害ではなく、しつけが悪いせいだなどとされ、子どもも親も汚名を着せられがちだった。直接的な遺伝子要因の発見が、偏見をなくすことに役立ってほしい。」と語っています。

また、共同研究者のケート・ラングリー氏は、「ひとつの遺伝子変化だけではなく、DNVも含むいくつかの遺伝子変化が絡んでいる可能性や、そこにさらにまだ知られていない環境的要因も絡んでいるかもしれない。」と述べています。

まだまだ分からないことが多いADHD発症の原因が解明されることが期待されます。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

【関連記事】
待ち合わせがうまくできない!もしかしたら大人のADHD⁉︎
うまくすれば大成功を遂げるADDとADHD
ADHDのかたの必読書!?『今も元気なトットちゃん』
やっぱり病院に行った方が?ADHDの不安があったら
仕事でミス連発!ひょっとしてADHD!?

【その他】カテゴリの最新記事