●水面下の患者数は300万人とも
近年注目されるようになってきた大人のADHD。従来は子どもの病気と思われていましたが、ADHDの症状で社会生活が困難になっている人は少なくないありません。。
家族に理解がある場合、学校時代は多少の問題があっても大きなトラブルに発展することはないようですが、就職してから対人関係がうまくいかなくなり、一人で悩みを抱えてしまい、引きこもってしまう人も少なくありません。
大人のADHDに詳しい齊藤卓弥教授の研究チームによると、日本の大人のADHDの有病率はおおよそ1.65%とのこと。WHOの調査によると、大人のADHDの世界的有病率は平均3.4%とされています。
調査で明らかにされていない日本の大人のADHD患者は300万人はいるのではないかと齊藤教授は話しています。
●大人のADHD患者にも解禁された治療薬コンサータ
大人のADHD患者にも保険適用で処方できるようにして欲しい。そう望まれていた「コンサータ」が最近ようやく使用を承認されました。
コンサータの正式な名前はメチルフェニデート塩酸塩。ドーパミンの再取り込みを防ぐことによって、不注意、衝動性、多動性といったADHDの症状を抑える薬です。1回に18mgで、効果は約12時間継続するとされています。
コンサータの承認について、東京都新宿区で大人の発達障害を支援する活動に取り組む一般社団法人「発達・精神サポートネットワーク」代表理事の金子磨矢子さんは次のように語っています。
「コンサータは、今までは18歳までの子どもにしか認められていなかった薬なので、大人のADHDを抱えて困っている人たちは、早く解禁されるよう待ち望んでいました。コンサータが保険適用になり、引きこもっている人たちが外に出られるようになった、仕事に復帰できたなど救われた人は大勢います。」
●コンサータ以外のADHDの治療薬
多くの大人のADHD患者が解禁を待ち望んでいたコンサータ。ただし、大人のADHD患者の全てにコンサータが効果を発揮するわけではありません。
コンサータを使って効果があるのは、大人のADHDと診断された人の5~6割だと言われています。また、コンサータには、食欲不振、不眠、体重減少、頭痛、腹痛などの副作用が報告されています。
コンサータが効かない人や副作用が強く現れた人には、ストラテラが処方されることが多いようです。ストラテラの正式な名前はアトモキセチン塩酸塩。神経伝達物質の1つであるノルアドレナリンの再回収を抑制する薬です。
ノルアドレナリンの働きが不足すると、不注意や多動などの症状が現れるとされます。ノルアドレナリンは、脳内で放出された後、余った分が再回収されます。ノルアドレナリンの再回収を抑制するのがストラテラです。ストラテラは1日2回投与なので、効果は24時間持続します。ただし、ストラテラにも副作用があります。頭痛、食欲不振、傾眠、腹痛といった副作用が報告されています。このような症状が現れたら、主治医に相談しましょう。
大人のADHDは薬だけで治るものではありませんが、薬の力を借りることでADHDの症状が引き起こす問題を軽減することもできます。薬を上手に利用することが大切でしょう。
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