就労できているのはたった4割!? 発達障害者への就労支援の現状と課題

就労できているのはたった4割!? 発達障害者への就労支援の現状と課題

●発達障害者の就労状況

発達障害の人の就労実態はどのようなものでしょうか?発達障害者支援センターを利用している18歳以上の発達障害者を対象に調査した結果が公表されています。「就労中」と回答した人は全体の約4割。

発達障害者が就職して働き続けることが容易ではない実態が浮き彫りにされています。就労者の雇用形態を見ると、発達障害者の置かれている状況が厳しいものであることが分かります。就労者のうち、正社員は28%。期間の定めのある嘱託、非常勤、派遣社員などの非正社員は、実に69%を占めています。

賃金も経済的自立には遠いレベルにある人が多いことが、調査によって明らかにされています。就労中の人のうち83%は月収15万円以下です。就労していても、経済的自立には遠い実態であることが分かります。

●発達障害支援センターの利用者の生育歴

発達障害支援センターを利用する人には、学校を卒業して就職活動を始めた段階、一定の職業生活を経た段階で初めて発達障害との診断を受けたという人が少なくありません。成人に達してから発達障害との診断を受けた人は、約半数に上るとされています。

特別支援教育を受けた経験が無い人も多く、高校まで普通高校の通常学級で教育を受けた人は62%との調査結果もあります。発達障害という気づかれにくい障害を持つ方は、大人になるまでは「普通」の環境の中で学び、「普通」に社会人となることを目指すのが当たり前の思いだと言えるかもしれません。

他との違いを感じることは多くても、その原因が脳の発達のアンバランスにあると認識する機会を持たずに成人した人も少なからずいます。

就職活動を始めて他人とのコミュニケーションがうまくとれないことに悩んだり、就職後に部下を持つようになって対人関係が築けないことで困ったりして病院を受診し、発達障害との診断を受ける人も多いようです。

そのような経緯から、就労支援を求めて発達障害支援センターを訪れるケースは、少なくありません。

●障害認識と障害受容が就労支援の鍵

特別支援教育を受けたことがある人は、そのプロセスで障害を認識する機会も多いと言えます。障害者福祉や障害者雇用に関わる情報提供を受ける機会もあることでしょう。

高等教育に至るまで普通の学校で教育を受けた場合には、毎日の生活の中で他との違いを感じる機会は多かったとしても、その原因が何なのかを理解するための情報は乏しいと言えるかもしれません。

発達障害の人については、障害者雇用として支援する方が、さまざまな支援を効果的に行うことができて成果につながりやすいと言われています。しかし、大人になってから発達障害という診断を受けたり、発達障害に気づいても診断を受けようとしない人にとって、障害者手帳の取得を決断することは簡単なことではないかもしれません。

就労支援のプロセスを一歩ずつ進んでいく中で、障害認識が深まり、本人が障害を受け入れられるようになるケースも少なくありません。

発達障害者の就労支援では、障害認識と障害受容は大切な鍵だと言えます。

ただし、就労支援を行っている組織や機関によっては、比較的短期間に雇用就労につなげることを使命としているところがあるのも事実です。

障害認識や障害受容の状態と支援機関のマッチングを図ることが課題だと考えられます。

(執筆:木下書子, 監修:臨床心理士 鏡元)

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